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写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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最近読んだ本 「宅間守 精神鑑定書」 岡江晃・著 

今年はプライベートと仕事ともに忙しくほとんど映画を見に行けてない。。。

ただ、本はいつも通り電車の中や撮影の合間で読んでいるので、最近読んだ本の中で興味深かった本を一冊紹介します。写真は献本も含め、最近読んだ本です。

最近読んだ本 「宅間守 精神鑑定書」 岡江晃・著 _d0170694_19262988.jpg


1冊だけ紹介すると、
「宅間守 精神鑑定書」 岡江晃・著 亜紀書房

帯文にある通り、2001年大阪の池田小学校で児童、教諭を殺傷した宅間守の精神鑑定を行った精神科医の初著書。大阪地方裁判所に提出された精神鑑定書を、ほぼそのまま収載している本。

刑法39条には心神喪失者の行為は罰しない、また、心身耗弱者の行為はその刑を減軽するとある。ただ、実際にこの法律が適用され、無罪もしくは減刑になることは極めて少ない。
私も同感だが、被害者の家族の身になれば、自分の身内を殺した犯罪者がどのような理由であれ、国家による罰を受けてほしいと思うのは当然であるからだ。
そのため、死刑になるような重罪の場合、ほとんどこの法律が適用されたことはない。

それをふまえた上で本書を読むと、私を含め多くの人がこの宅間守は事件を起こす前から一般生活を送れるような正常者ではないと感じると思う。著書に書かれている通り、おそらくなんらかの精神障害であろう。
ただ、この精神鑑定を行った精神科医もそれが何なのか、またどのような精神病からくるものかが判断出来ないため、手の施しようがないといった状態である。

本文をそのまま抜粋すると、
「宅間守の示す精神症状は、日常臨床で経験したどの症例にも該当しないほど極めて稀であり、・・・バラバラな症状と非定型的な症状である。」
そして、鑑定書主文の初めにはこう記されている。
「被告人宅間守には、いずれにも分類出来ない特異な心理的発達障害があったと考えられる。」

問題はこの事件を起こす前に、何度も様々な精神科に通院しており、入院まで行っている。それぞれの段階でなぜ宅間守が事件を起こさないような状態に持っていくことができなかったのか?
アメリカでは自分の体内に流れる血が凝固してしまうため、動物を殺し、その血を体に塗りたくっていた精神病院の患者を退院させて、その人間が後に猟奇殺人を犯すという事例もある。
著者の精神科医も語るようにそれ自体は日本の精神医療の汚点であると思われる。

この本を読んで、宅間守に反省の色は全くないように思われるし、私達とは違う善悪の判断を有している。
アメリカで以前、死刑を受ける権利を訴えた殺人者がいたが、この宅間守を早急に死刑にしたことが果たして良かったのか、疑問に残る。

レッサーパンダ事件もおそらく自閉症と思われる方が起こした殺人で障害者が殺人を起こした場合、人権団体の顔色を伺うことから、マスメディアは一斉に報道規制をかける。私達と違った基準で生きている人間が罪を犯した場合、そのまま私達社会の方を当てることがその犯罪者に罪の意識を感じさせることになるのか。
刑事司法と精神医療との境界線を引くことの難しさを物語った一冊でした。



一応、他に読んだ本は
「全体主義の起源3」 ハンナ・アーレント・著
「血の逆転」 ジェームズ・ワトソンなどのインタビュー本
「<ひと>の現象学」 鷲田清一・著
「全盲の僕が弁護士になった理由」 大胡田誠・著
「聖母の贈り物」 ウィリアム・トレヴァー・著
by daisukeozaki | 2013-08-25 19:26 | | Comments(0)