写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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先日のガーディアン・ガーデンとのワークショップにご参加いただいた皆様ありがとうござまいます。
たくさんのお礼のメールなどもいただいており、いつもながらやらせていただいて本当によかったです。
以下、長文ですがご報告と感想です。

私の写真教室とは違ってガーディアン・ガーデンでのワークショップは若手写真家が視覚障害者を相手に自分の作品をプレゼンテーションするというプログラムがあります。目の見えない人たち5、6人の前で自分自身でも初めて触るような凹凸の立体プリントで説明すると酷なプログラムなので、多くの写真家が自信のないような話し方で自身の写真に関して話をしてしまいます。
その後で、視覚障害のある方達が午前中に自分たちの撮影した写真を説明するですが、その多くがまるで自分自身が「見て」、きちんとした構図を考えや意図を持って撮影したかのように自信を持って話をしていました。
その落差も面白かったのですが、なぜ毎回、視覚障害のある方はあそこまで自分たちの写真を自信を持って説明できるのかと考えていました。

視覚障害のある方達はこの主に視覚中心に出来ている世界では「何か」を絶対的に信じていかないと生きていけないのだと思います。特に近くにいる誰かを信用していかないといけないわけです。例えば、タクシーに乗れば、最短距離を行ってくれて、きちんとぼったくりをしないであろうとタクシー運転手を信用しないといけないわけです。
写真教室の場合は、撮影には必ず介助者がつくので、その介助者が説明し、撮影できた世界に対して全幅の信頼を置きます。それが一つ一つ増えていくことによってさらなる自信につながり、新たな世界が広がっていくのです。
視覚障害のある方は誰かを信頼し、そこから自身の世界を構築していくスピードが私たち健常者よりも早いと思います。フェステインガーの認知的不協和に関して順応しやすい方達なのだと思います。
それが若手写真家の方と視覚障害者の方たちの説明の仕方にも表れているのかなと思います。

では、我々健常者も何か違うのかというと信頼という意味では同じように何かを信頼しないと生きていけません。福沢諭吉の書かれた紙が野口英世の書かれた紙より価値があり、福沢諭吉の書かられた紙をたくさん持っている人の方がより幸福になるのではないかと信じ、電車で隣に座った人が急に刃物でさしてこない、この電車が急に地震で止まり津波で流されないと信じていないと生きていけません。
この信頼がなんらかの大きな災害や事件などでできなくなってしまうと、解離性人格障害や離人症など精神的な病となってしまいます。
また当たり前ですが、人は見ようと思ったものしか見ることはできません。それ以外はないに等しくなります。
以前、写真教室で視覚障害者の方が何か臭いにおいがするのですけど、なんのゴミですかと介助者の方に説明を求めた時に、それはゴミではなく、ホームレスの人だったということがあります。その視覚障害者は今までホームレスの人の事の説明を受けた事がないので、今度から道端で何か臭いがした時に思い描くイメージが少し変わるかもと言っていました。こういった場合は多くの人が意識的に見ることを避け、まさか普段の生活で細かく説明を求められることはないと思います。

また神様のいる人といない人によっても世界への信頼の仕方が違ってくると思います。こう書いてしまうとこの写真教室に何回も参加する方には誰かわかってしまいますが、仲の良い全盲の方がキリスト教(カトリック)を信仰されているので、お酒の席で「神様は見ることができるんですか?写真に撮ることはできるんですか?」などとつっかかってしまったことがあります。「そういうんじゃないんだよ〜」とその時言われましたが、何をどこまで信仰するかによっても世界の捉え方は変わってきます。

視覚障害のある方との写真教室は怖いものでもあります。
ワークショップの中で少し話をしましたが、40年以上青虫が本当は緑色をしていて青色していないと初めて知り、信頼していた世界が変わることもあります。
別にそれは視覚障害者の方たちだけでなく、私たち健常者の方でも同じことが言えます。目で見ていた当たり前の世界が、それが当たり前の事では無くなってしまうわけです。
それを怖いと思うのか、面白いと思うのかでも全然変わっていきます。世界を変えることは難しいけれども、自分を変えることは結構簡単です。

まとまりのない報告・感想になってしまいましたが、参加された方たちが何かの答えではなく、大きな疑問を持っていただける会になっていれば幸いです。

写真は今回のワークショップで触っただけでどの写真が一番よかったのか、その後に実際の写真を見て説明を聞いた後でどの写真が一番よかったのかと2回の投票で1番になった水滴の写真です。
凹凸にしたことによって水滴って全部違う大きさで、同じ大きさではないんですねと言っていたのが印象的でした。


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by daisukeozaki | 2016-08-22 20:01 | Comments(0)