写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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今回の写真集で使わなかったあとがき

今回の写真集で内容が異なるという判断で掲載しなかった文章のひとつです。

ある施設に行ったときのこと。その施設の方たちみんなで公園に散歩に行った。施設等では色々な人が研修で来ているのだが、その日は関西で刑務所の看守として働いている人が来ていた。昼食のときに様々な話を聞かせてもらった。万引きや食い逃げなどの軽犯罪で捕まっている受刑者も多く、特に12月から1月にかけては暖かく食事もでるところで正月を迎えたい為に受刑者の数も増えるという。

ロンドンにすんでいる時に女性だけの刑務所を撮影する気はないかという話をいただいたことがある。興味はあったが、イギリスには死刑制度がない。日本でなら死刑になるであろうような人も終身刑に服している。そういった受刑者の写真を撮り、発表した場合に被害者の家族の気持ちはどうなるのだろうと考えてしまう。昔、トスカーニという写真家が死刑囚のポートレートを撮影した死刑制度の是非を問うベネトンの広告があった。企業広告にあるにもかかわらず、文字は一切掲載せず、写真だけが人々に訴えかけるという社会性の高い広告である。大量に外界にばらまかれ、大多数の人の目に止まる広告を使用することにより、ある意味では写真の本質的な部分をうまく利用していると興味を引いた。しかし、撮影された死刑囚の中には言葉には表せられないほどの残忍な罪を犯した犯罪者も数多くいる。仮に被害者の家族が毎日通う駅にその広告が存在した場合、どのような気持ちになるであろう。死刑囚に対して真っ先に自分の手で殺してやりたいという強い感情をもつ方もいるであろう。私が囚人達の写真を撮り何らかのかたちで発表した場合、被害者の家族の目に触れる可能性はゼロではないと思い、断った。

しかし、そのやりとりの中で一つ印象に残った話を聞かされた。その人が言うには、「夜の見回りの時にナイフを持っていくのだが、なぜだかわかるか?」と質問された。「護身のためですか。」。わたしはそう答えた。「それも一つだが、主な理由は時々受刑者が服やベッドのシーツを使って首を吊って自殺しようとするのを防ぐために携帯しているのだ。」という。終身刑を言い渡され、死ぬまで単調な毎日を過ごすつらさに耐えきれず、自殺しようとする殺人者を生かし続けるためのナイフなのだと。
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by daisukeozaki | 2010-06-23 00:55 | Comments(0)