尾崎的映画紹介『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』 バンクシー監督
2011年 07月 27日
ロンドンに住んでいた時、イーストロンドンでリバプールストリートの近く、ショーディッチというエリア近くに住んでいたことがある。今は違うが、そのエリアは昔スクワッター(イギリスで空き家に勝手に侵入し、住み着くホームレスのような人達。イギリスは空き家でも水道や電気が止められないので、こういう人達が結構いる。イメージとしてはトレイン・スポッティングの麻薬の売人の家。)として若手アーティストが集まっている場所だった。映画にも名前だけ登場するダミアン・ホーストなども無名の時代には住んでいたらしい。バンクシーもよくそのエリアに遊びも兼ねて来ているらしく、そのエリア周辺には彼の作品がたくさん観られ、よく飲みに行っていた僕にとってはロンドンの一風景という感じ。テート・ブリテンに勝手に展示したり、イスラエル、ガザ地区の壁に落書きしたりする活動もおもしろいなーと思い、見ていた。
このようなバックグラウンドがあった上で映画を観た感想ですが、実にバンクシーらしい現代美術・藝術を皮肉った映画だと思った。藝術関係に関する仕事をされている方には一度は観た方がいい映画。
この映画は、美術の分野だけでなく、様々な分野、日本の映画の分野についても通じるものがあるように思う。仮に映画作りに関して才能もない普通の古着屋の店主が、財力でスタッフを集め、大々的な宣伝をし、バンクシーのようなカリスマ監督から推薦文をもらい、映画を完成させる。そこにきちんとした批評がないとなると、審美眼の乏しい一般の人が作品を公正に判断するのは難しいと思います。ネタばれかもしれないが、まして、2作目にマドンナのようなセレブリティ女優が出演を熱望していると聞けば、尚更。ある程度の体裁が整っていれば、いい映画となってしまう。
誉めることは誰でも出来きるが、真正面から日本でこの作品は良くないと言える人は少ない。日本美術の世界もそうだけど、きちんとした批評を出来る人はかなり限られており、一般の人までその批評はなかなか届かず、有名人の発信した情報をそのまま鵜呑みにしている状況。たぶん、誰しも、現代アートの展覧会を観に行って、なぜこれがと思った経験があると思う。
そういった意味で、自戒を込め、藝術関係などで仕事をされている方にはお勧めの映画!!
話は少し変わる、つい先日、渋谷駅の岡本太郎の絵に貼り絵をしたり、広島の空に「ピカッ」という飛行機雲を作った「Chim↑Pom」というアーティスト集団が日本にいるが、バンクシーとちょっとかぶるかもしれない。Chim↑Pomはもっと美術界のメインストリートを進みながら、計算してゲリラ的活動を行っているように思うけど。