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写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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写真家の鬼海さんと

先々週、都写美で、先週は新宿のPlace Mで鬼海さんと話をした。お酒の席での会話は楽しかったが、時々ぐさっと記憶に残る話もされる。

「尾崎くんのような写真はゆっくりでいいから撮り続けないといけないよ。」
「これからが本当に大変だよ。」

正直、写真家というのもがここまでしんどいことなのか、始める前に想像などできなかった。精神的、経済的全てのものを含めてである。
よく引用するポール・ヴァレリーの言葉で、“作品を作る理由は自分の弱さからだ”というのが言い得て妙である。弱い存在であるから写真家であり続けられる。
これだけは、本気で面と向かって写真に対峙している人でないとわからない。「写真を何回ぐらい本気でやめたいと思ったことがありますか?」という私の質問に鬼海さんは「毎日だよ。」と冗談まじりに答えていたが、本心が全くないわけでもないであろう。
ダイアン・アーバスに私も鬼海さんも影響を受けているが、彼女の良くない所は写真を撮る期間が短すぎる、死を簡単に選びすぎたという意見は同じである。リアリティというのは幻想であるというアーバスの言葉があるが、それは幻想であり、どうしようもない問いを私に投げかけてくる。現実というものはここまでのものなのか、見なかった方が良かったのではと何度思ったことか。

鬼海さんが浅草の壁をバックに初めてポートレートを撮ったのが28歳で、今の私とちょうど同い年である。それから約40年写真を続けてこられた。
その方から続けるべきと言われているのだから、継続することによってき何かが見えてくるのではないだろうか。
東北訛りで「大輔くん」というあまりに人間的な鬼海さんから背中を押されたような気がした夏の一夜だった。
by daisukeozaki | 2011-08-23 15:21 | Comments(0)