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写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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自己と非自己

古本屋で多田富雄の本を購入。
動的平衡などで福岡伸一が現在人気だけど、多田富雄は免疫学の分野でちょっと哲学みたいな面白い人間のしくみを教えてくれる。

例えば、隣にいる人とは私に違いはあるのかというと、人間の構成成分でみれば、99.99%違いはない。残りの0.01%が違う。オンリーワンを求められるが、それぐらい他人と大差はない。しかし、この00.1%によって臓器移植は困難となっている。この0.01%を胸腺によって作られるHLA抗原によって識別し、自己と非自己をわけてしまうからだ。このHLA抗原は父親、母親から半分ずつ遺伝されている。なので、もし臓器移植をする場合、父親、母親からだとHLAが半分違っているため、難しくなり、兄弟、姉妹からの移植の方が可能性が高くなる。
免疫システムというのが完璧に構築されたすごいものなのかというと、これがかなり曖昧なシステムとなっている。偶然に偶然が重なり出来ているようなものだが、想定外の事が起った場合でも人間の内部では臨機応変に対応している。初めから考え抜かれ、ちゃんと作られた組織の方が良いということが迷信となってしまう。特に今回の震災の場合のように想定外の事が起った場合には耳の痛い話となってしまう。

また、自分探しの旅というものがあるが、私達が誕生する時に自分自身をミクロの単位のDNAとしてみた場合、どのDNAが体の心臓の部分になるとか、胃になるかなど全く決まっていない。周りの他のDNAの様子を見て、DNAそれぞれが判断して、体のそれぞれ一部となっている。人間を一つの世界として考えれば、私は○○であるなどミクロ的には元々存在しない。状況によってその場で得た役割を全うするのである。逆に、私は××であると自己顕示よくの強く勝手に行動するやつが体の中にできるのだが、それが癌細胞になる。癌を永久に直すことのできる細胞が誕生するならば、癌に対して「おまえ、周りの空気読めよ。」といってくれる細胞となる。
仏教の華厳経やキルケゴールの「死に至る病」の中でも、自己とは何かという問いの答えは「他者との関係」の関係というものが自己であるというような答えを提示している。

福岡伸一の動的平衡などと一緒に著者の本を読むとさらにおもしろいと思います。
by daisukeozaki | 2011-12-17 20:34 | Comments(0)