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写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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オウム真理教

読んだ感想としては、確かに完全な中立的立場とは言いがたい。著者もそれは十分承知の上であると思う、そして、きちんと活字にして発表すべき本の一つだと思う。

ドキュメンタリー映画の「A」、「A2」は共に鑑賞済み。今回は麻原彰晃とは何者なのかということを中心に話が進められていく活字でつづられている本である。
現在の麻原彰晃には死刑が確定しているが、娘たちや麻原彰晃と色々な意味で面識のある人物たちのインタビューをメインで構成されている。
死刑が確定する前で、まだ面会ができる状況の麻原はというと、娘たちや弁護士と面会最中にも関わらずマスターベーションを行ったり、独房では糞尿にまみれている。
そのような状態にも関わらず、きちんとした精神鑑定は行わず、絶対悪として社会から抹殺される麻原裁判や日本のメディアに警鐘を鳴らす本である。
絶対悪と日本で見なされたオウム真理教は、例えば、麻原の娘たちは大学進学はおろか、高校ですら入学を拒否されてしまう。学校側の意見ももちろん分かるのだが、それを当たり前のようにスルーしてしまう村文化のある日本社会がおかしい。

私自体の立場を言えば、オウム真理教が行ったことは犯罪であり、犯罪を起こしたものはそれ相当の刑を受けるべきであり、死刑賛成の立場をとる。ただ、法治国家である日本でここまでまともに機能していない裁判で結論を決めるのはおかしいと思う。メディアスクラムによって形成された世論によって中立的な裁判が行うことが出来なくなっている。

著書と共通認識の一つはファシズムの誕生にメディアが大きく関わっているということである。不安を煽ることによって、視聴率をあげ、敵対するものを作っていくのである。今の北朝鮮の報道も同じで、ミサイルが日本に打ち込まれた場合は国民全てが戦争賛成に廻ってしまうのではなかろうかという、危機感も感じる。メディア自体が観察されなければいけない社会現象なのだ。ちなみに同時期に起った阪神大震災の報道時間と比べた場合、時期によってもあるが、大体10倍である。それほど、国民が関心を傾けながら、なぜこの事件は起ったのかという問い自体が回収されていない。

この本では最終的になぜこの事件は起ったのかという大まかな結論まで行き着いており、私自身もその結論を支持する。

昨日、禅僧の方にオウム真理教の話を聞いた時に。宗教自体が共同体の枠組みからはみ出るものを扱っており、それにより宗教となっているため、多かれ少なかれ、全ての宗教は共同体をおびあかすものであると言っていた。全ての宗教は死の概念を扱い、それにより共同体の枠組みを逸脱する部分を持っている。
私自身がこの事件に関心を持っているのは、別に写真の作品で死をテーマに扱っているわけではないが、自分自身が主として重きを置くところは社会に取って絶対に必要ではない部分である。宗教が扱っている部分も一般生活で絶対に必要な部分ではない。実際、ヨーロッパを見た場合、新興宗教の数と藝術への助成金の多さは比例の関係にある。村上春樹のアンダーグラウンドを読んでも感じたが、彼らは決して絶対悪や特別な存在ではなく、ともすれば自分がなっていたかもしれないというすごく身近な存在のような気がする。サリンを大量に吸い込み、体に異常を感じているのにも関わらず、会社に這ってでも行くほど、会社に服従しているサラリーマンのように。

写真家の渡辺克巳が息子渡した写真集に書いてあった文章がぴったりと当てはまる。
「世の中に悪い人はいません。悲しい人がいるだけです。」


オウム真理教_d0170694_20134691.jpg


「A3」  著者 森達也 集英社インターナショナル(出版社) 1995円
by daisukeozaki | 2012-02-03 20:14 | | Comments(0)