ゴミ屋敷の住人と私達の違い
2012年 05月 10日
先日読んで結構面白かったので橋本治の「巡礼」を紹介します。
話自体はゴミ屋敷の主の話で、その人がどういう人生を送ってきたのかという話。ゴミ屋敷の主の人生もどこかにいそうな所謂「普通」の人の人生模様が描かれており、そこまでジェットコースター的なストーリーテラーでもない。文体もすこぶる読みやすい。
では、なぜ私がそこまで引かれたかというと、結局、私もゴミ屋敷の主とほとんど変わりがないという事だ。私だけでなく、人間誰しもがそうであろうと思ってしまう。
ゴミ屋敷の主は集めているのは「ごみ」ではなく、「有用なもの」で自分は意味のある事をしていると思ってゴミを集めている。私達も結局は自分やっている事になんらかの意味付けをして、さも「有用」で「意味」のある事をやっているのかもしれないが、それは結局、「ゴミ集め」にしかすぎないのではないか。
人間はやはり目の前に人参をぶら下げたような状態でないと生きてはいけないのではないか。
サルトルは人間は自由の刑に処せられると言ったが、実存主義のニヒルな部分を感じてしまった。
読みやすくてお勧めです。

橋本治著 「巡礼」 1400円(税別)