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写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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撮影日誌 盲人に写真を撮ってもらうとは?

10月にまた視覚障害者に写真を教える写真教室を行う。写真教室の際によく話をしているのが、どうして盲人に写真を撮ってもらうということを始めたのかである。

イギリスにいた時に色々な人に作品を見せて回っていた。営業的なブックの持ち込みもしたし、作品を撮る為に自分の興味のある人、主に何らかの表現者であるが連絡をとり、直接見てもらっていた。既にその時に舞踏家の工藤さんを撮った『無』の写真もあったので、相手からは、邪見に対応をされるということも少なかった。
その中のあるダンサー、あとでわかったのだが、ダンスを始める前は牧師さんで、その前はイギリス軍の兵士だった方に障害者と健常者で構成されるAMICIというダンスシアターカンパニーの代表、ウォルフガングを紹介してもらった。そこで初めて障害のある方達と関わるようになる。それまでは自分がそういった方達と密な関係になると思ってもいなかった。むしろ、小さい時に腎臓が悪く、尿がうまく処理出来ないというために、手術をしたのだが、その際に担当医師におしっこをかけてしまい、自分が将来、「下の世話」に関わる職業には絶対につかないと強く思っていた。

毎週、水曜日の夜にAMICIの練習が行われていて、それに私も参加し、そこで写真を撮影していた。練習が終わると、二人の盲人と一緒に帰宅するのが常となっていた。一人は写真の全盲の方で、もう一人は若い夜盲症の方であった。
視覚障害者の方と接し、何より驚いたのが、周囲の人間との信頼関係である。視覚がない為に相手を信頼せざるおえないことが多々ある。例えば、全盲の方はいつも駅からタクシーを使うのだが、これもタクシーの運転手を信頼せざるおえない訳である。写真教室で晴眼者に仮想視覚障害者として体験をしてもらっているのだが、お金を支払うこと一つでもどれだけむずかしいことか。また、少しでも今までと同じ場所に違うものが会った場合など、晴眼者の私達よりも過敏に反応する。

私はそんな視覚障害者がどのように世界を見ているのかが気になったのである。視覚障害者の写真教室の原点もここにある。バリアフリーとかそういった考えも全くないわけではないが、主に彼ら・彼女らがどのように世界を見ているのか、またそのことで私自身は新たな違った世界の見方を教えてもらえるのではないかということである。

ソフィ・カルという写真家・アーティストに「blind」という作品がある。先天的盲人の人に「貴方にとってこのようで最も美しいものは何ですか?美とは何ですか?」という質問をし、盲人の方の答えを代わりに写真家が写真に撮るという作品である。
私は普段から一緒に過ごしていた全盲の彼女がどのように答えるのか、またその答えを彼女が写真に撮った場合どういう風に写るのかが気になってしかたがなかった。ある日、彼女に質問をすると、その答えは「人間」であった。
それでは私も人間であるから、私を是非写真に撮ってもらえないかと伝え、カメラを渡したのである。そして撮られた写真が写真集「写真は私たちの記憶を記録できるのですが?」の最後の写真としておさめられている。

年に一度ぐらいは会っているのだが、昨日、東京でAMICIの代表、ウォルフガングと会う機会があり、ああ、もう5年も前かと時間の早さを感じていた。


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by daisukeozaki | 2012-08-01 19:02 | Comments(0)