最近読んだ本の感想(「冥土めぐり」鹿島田真希など)
2012年 08月 07日
最近、ミルグラムの打ち合わせで助成の方にお会いした時、読んでた本が岩波書店から出ている岩波講座の「性/愛の哲学」という本で、こんな本ばかり読んでるんじゃねーかっぽく思われるのはなんか嫌だし、このブログを読んでいるらしいので、最近読んだ本三冊の感想を簡単に書きます。
「現代殺人百科」 コリン・ウィルソン 青土社
「アウトサイダー」で有名なコリン・ウィルソンの猟奇殺人を中心に様々な殺人をデータベース的に扱った本。淡々と記録的文章が並んでいく中、一番興味深いのは巻頭の著者が猟奇殺人に対してどのように考えているかを記した箇所。私が思っていることと共通する部分が多々あり、非常に興味深かった。欲望がどんどんと次の段階に進んでいくマスローの欲求段階とカミュの異邦人のように論理的に破綻している場合でもそれを正しいとしてしまうサルトルの「魔術的思考」は私も常々思っていた。
あと、私が会ってきている一般的に正常ではないと考えられる性癖を持っている方と芸術家と猟奇殺人者には何かしら似たようなものを感じてしまうのは私だけではないであろう。
「失われた時を求めて」のマルセル・プルーストはネズミをいたぶって殺すのを眺めて多いに愉快がっていた。
「美術の物語」 E・H ゴンブリッチ ファイドン社
言わずとしれた名著が単行本サイズで出たので、購入。
古代からキュビズム辺りまでの美術の流れを図版で説明し、非常に読みやすい本。ただ、現代美術をもっと知りたい方には物足りないと思う。
読んで当たり前ではあるが、ルネサンスの時の美術の発展、また宗教と美術の関係というものをまざまざと感じた。
ヨーロッパに関して言えば、新興宗教と数の多さと美術に関する助成金の額の多さは比例関係である。
昔は見ているものを見たまま描くのではなく、知っているものを知っているように描いていたということ。表現というのはごくごく最近であって、所謂知識としての絵であったということ。
色々写真家として興味深かった。
「冥土めぐり」鹿島田真希 河出書房新社
第147回芥川賞作品。結構前から芥川賞は出来るだけ毎回読んでいる。
話自体はちょっと普通ではない母と弟をもつ主人公が旦那と一緒に過去に家族で行った旅行と同じ場所にふたたび訪れるというもの。そこで過去を回想しながら、今の自分を見つめていくといった感じか。
高校時代ドストエフスキーに傾倒し、ロシア正教に入信したというほどの方なので、どんな文章だろうと思ってみたが、私は素直に面白かった。
文体的には私は近年の西村賢太、朝吹真理子や田中慎弥の方が好きだが、人間の心情描写がとても良かったと思う。
どうしようもない家族をもった自分の人生を不遇と思う一方、障害を負った旦那が色々な不幸も見舞われてもそれを「潮の満ち引き」のように自然に受け止めている姿をみて、何かに主人公は気づき始めていく。
単行本に収録されていたもう一つの「99の接吻」はいまいちだったけど。
お盆の帰省の際は「冥土めぐり」をお勧めしやす。
「現代殺人百科」 コリン・ウィルソン 青土社
「アウトサイダー」で有名なコリン・ウィルソンの猟奇殺人を中心に様々な殺人をデータベース的に扱った本。淡々と記録的文章が並んでいく中、一番興味深いのは巻頭の著者が猟奇殺人に対してどのように考えているかを記した箇所。私が思っていることと共通する部分が多々あり、非常に興味深かった。欲望がどんどんと次の段階に進んでいくマスローの欲求段階とカミュの異邦人のように論理的に破綻している場合でもそれを正しいとしてしまうサルトルの「魔術的思考」は私も常々思っていた。
あと、私が会ってきている一般的に正常ではないと考えられる性癖を持っている方と芸術家と猟奇殺人者には何かしら似たようなものを感じてしまうのは私だけではないであろう。
「失われた時を求めて」のマルセル・プルーストはネズミをいたぶって殺すのを眺めて多いに愉快がっていた。
「美術の物語」 E・H ゴンブリッチ ファイドン社
言わずとしれた名著が単行本サイズで出たので、購入。
古代からキュビズム辺りまでの美術の流れを図版で説明し、非常に読みやすい本。ただ、現代美術をもっと知りたい方には物足りないと思う。
読んで当たり前ではあるが、ルネサンスの時の美術の発展、また宗教と美術の関係というものをまざまざと感じた。
ヨーロッパに関して言えば、新興宗教と数の多さと美術に関する助成金の額の多さは比例関係である。
昔は見ているものを見たまま描くのではなく、知っているものを知っているように描いていたということ。表現というのはごくごく最近であって、所謂知識としての絵であったということ。
色々写真家として興味深かった。
「冥土めぐり」鹿島田真希 河出書房新社
第147回芥川賞作品。結構前から芥川賞は出来るだけ毎回読んでいる。
話自体はちょっと普通ではない母と弟をもつ主人公が旦那と一緒に過去に家族で行った旅行と同じ場所にふたたび訪れるというもの。そこで過去を回想しながら、今の自分を見つめていくといった感じか。
高校時代ドストエフスキーに傾倒し、ロシア正教に入信したというほどの方なので、どんな文章だろうと思ってみたが、私は素直に面白かった。
文体的には私は近年の西村賢太、朝吹真理子や田中慎弥の方が好きだが、人間の心情描写がとても良かったと思う。
どうしようもない家族をもった自分の人生を不遇と思う一方、障害を負った旦那が色々な不幸も見舞われてもそれを「潮の満ち引き」のように自然に受け止めている姿をみて、何かに主人公は気づき始めていく。
単行本に収録されていたもう一つの「99の接吻」はいまいちだったけど。
お盆の帰省の際は「冥土めぐり」をお勧めしやす。
by daisukeozaki
| 2012-08-07 18:55
| 本
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