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写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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最近読んだ本の感想(「千年の祈り」 イーユン・リーなど)

「千年の祈り」(著者/イーユン・リー)

すばらしい短編集。ここまでの良作が詰まっている短編集を読んだのは近年記憶にないぐらい。
中国独特の政治的力であったり、家庭環境であったり、何かしら圧倒的な見えない手によって運命を翻弄させられた人達が全ての作品に登場する。そして、それらの登場人物はみな弧度を背負っている。ただ、全てを悲観的に捉えすぎず、その中で生きていこうとする人間をきちんと描ききっている。何かしらチェーホフに通じる感じがする。
中国映画「スプリング・フィーバー」や私の大好きな映画監督、イ・チャンドン作品が好きな人は必読の一冊。

「演劇入門」、「わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か」
(著者/平田オリザ)

劇団「青年団」を主催する劇作家・平田オリザの著書。
想田監督の「演劇1」「演劇2」を見ているのでダブってくる部分があるが、それだけ言っている事が一貫しているようにも捉えれる。
著者は人間は演技をする動物であると言う。パーソナルの語源はペルソナなのだが、この意味には「人格」という意味と「仮面」という意味の両方を含む。ある霊長類学者がゴリラは、父親になった瞬間に、父親という役割を明らかに「演じている」という。しかし、そのゴリラも同時にいくつかの役割を演じ分ける事はできない。父親になった瞬間に、たしかにそれまでの個体とは違う人格を演じているのだが、そこでは前の役割は捨て去られる。
人間のみが、家族の前で、会社の仲間の前でなど、社会的役割を演じ分けられる。私の好きな精神科医の中井久夫が多重人格者はむしろ少数人格者ではないのかと言っていた。数えられるぐらいしか人格が分けられないからだと。
シェイクスピアも人生は演劇であるとも言っていた。
演劇論の方がよりもの作りをしている方にお勧めの本です!!

「いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか」(著者/内藤朝雄)

第6章の新たな教育制度に関しては首を傾げてしまう箇所もあるが、その他の部分は多いに納得出来る。
学校というコミュニティが一つの世界となり、そこだけの著者が言う群生秩序が生まれる。この群生秩序が一般に考えられる倫理・道徳観よりも優先される為、いじめが横行し、歯止めが利かなくなってしまう。esという映画にもなったが、心理学の実験のスタンフォード監獄実験からも明らかな通り、作られた世界が外部から閉ざされた環境であればあるほど、簡単に人は怪物となってしまう。道端で人が殴られていれば、警察に通報するのが当たり前なのだが、学校ではそれがいじめとして扱われ、その群生秩序の中で解決を試みる。いじめのような状況は学校だけにとどまらず、会社でもあり、ユダヤ人大虐殺のホロコーストなど国家内でも起こりうる。
学校でのいじめの解決策として、著者は学校自体をもっと開かれた場にすること、問題が発生した場合、警察を呼ぶ事などをあげている。大学などは他に開かれている為にいじめは起きにくい。
その他にも加害者・被害者の心理状況など興味深い内容の本。一読の価値ありです。



最近読んだ本の感想(「千年の祈り」 イーユン・リーなど)_d0170694_18332649.jpg

by daisukeozaki | 2012-11-25 18:34 | | Comments(0)