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写真家・尾崎大輔のblog


by daisukeozaki
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性の衝動 新実存主義への道 コリン・ウィルソン

性において何が正常で何が異常なのかという疑問は常にある。その問いに立ち向かったのがこの本、というかコリン・ウィルソン。
アウトサイダーから殺人百科までいくつか読んでいるが、神保町の古本屋なので150円だったので購入し、読了。

トルストイは子孫を残す為の生殖行為以外はすべて異常だと示唆していた。現在においては多くの人はそれを聞いても首をかしげてしまうであろう。基本、本の中にある通り、私達の道徳的判断の大部分は社会の現状維持に基づいている。
そして、文明社会の多くの国において、性が悪と関係しているという考えが主にあるのであろう。ただ、性がなければ、確実に人類は滅亡しているわけである。そして、衣・食・住が満たされた後、人々は性に興味をいだく。
ちなみにおそらく三大欲望、食欲、睡眠欲、性欲で一番弱いのは性欲だと私は思う。なぜならば、ホロコーストに関してかなりの著作を今まで読んできたが、アウシュヴィッツにおいて多くの人がそこに同姓愛も含めた性交渉はなかったと言っている。それでも囚人間で性交渉が行われていたわけであるが、行っていたのはほとんどが特殊部隊と言ってガス室で殺された死体の処分を担当しいていた囚人で、証拠隠滅のため、特殊部隊も定期的に殺されるわけなのだが、比較的他の囚人よりも優遇されていたらしい。そのために性欲も他の囚人よりも強くなったのであろう。
性に興味をいだき、後は「殺人百科」にも書かれているがマスローの欲求段階説のように欲望は増幅していき、ゲーテのファウストのように「単調な1年より、快楽にみちた1時間」を求める。さらにそこにサルトルで言う「魔術的思考」(カミュの「異邦人」ように太陽がのぼったから、人を殺したというような完全な論理破綻による思考)とラットや猿の社会心理実験からもあるようにその人の環境状況がプラスされれば、異常殺人者となってしまうと著者は語る。

ただ、この本の難点はフロイトのタナトスに関して否定的であるという点。異常殺人などサディズムの考察は的を得ているように思うが、私が実際見聞きしてきた、風俗嬢に何十万も払って、自分自身の血管を破裂させたり、有刺鉄線でSMの縛りをやったりする人の説明が出来ていないと思う。また、同性愛者に関しての説明も物足りない。

これを読むならば、同じ著者の「殺人百科」の序文を読んだ方がおもしろいかも。後は大体上記の要約で事足りると思います。

性の衝動 新実存主義への道 コリン・ウィルソン_d0170694_20115243.jpg

by daisukeozaki | 2013-01-09 20:12 | | Comments(0)